ふたりの森歩き、しらびそ小屋のチーズケーキとコーヒー。

翌日の森歩きはしらびそ小屋を目指す。山歩きを始めた頃、しらびそ小屋は訪れてみたい山小屋だった。しらびそ小屋といえば、薪ストーブで焼いた厚切りトースト(自家製こけももジャムつき)の朝食と、豆を挽いて淹れてもらうコーヒーとチーズケーキのスイーツ。ひなびた山小屋に、暖を取る薪ストーブに、天井からぶら下がるランプに、四角い厚切りトーストに、遠くから漂う豆挽く音と香りに、ゆらゆら湯気立つカップのなかのコーヒーに、薄暗い中に浮かび上がる真っ白なチーズケーキ。描写に耳を傾けているだけでうっとりと、どの場面を切り取っても絵本のような世界観に当時大きく憧れた。

20130701_685395

20130701_685069

いつも一人で歩いていたお気に入りの場所を二人で歩くのはとても愉快だった。もともと登山嗜好はなく頂上を目指さない散歩の延長上のような森歩き、つまりハイキングを好んでいるから、ひさしぶりに北八ヶ岳に行っても、特に天狗岳やにゅう(かわいい名前の山ですね)のピークに上がることなく苔生す森をうろうろ歩いていた。わたしには大きな発見があった。6~8月にかけてしか歩いたことのなかったお気に入りの森はいつもベリーの焼き菓子のような甘い香りを放っていたけれど、11月末のそれはシダーウッドのような静謐な香りだったのだ。イギリスでアロマセラピーを学んでいた頃、わたしの大好きな精油はジャスミンやサンダルウッドやブラックスプルースやフランキンセンスだった。でもそれ以上に好きだったのはシダーウッドの香り。当時、その時々で自分の嗅覚に心地良い、嗅いでいて精神的な落ち着きと安定感をもたらしてくれる精油のスピリチュアルな薬効の綴りに目を通すのために「ヒーリング・ザ・スピリット」というアロマセラピーの本を開くのは、まるでその日の星占いを読むような胸の高鳴りがあった。香りを通してその時の自分の在り方や状態を知れるのはなんだかとても(占いよりも)道理に叶っているような気がしたのだ。だって手の平の線が年々変化してゆくように、しっくりくる香りもずっと同じに留まるわけではないもの。

20130701_685095

Cedarwood
**strength / endurance / certainty**

20130701_685097

20130701_685079

20130702_686380

怪獣

20130701_684300

森を歩く二人は疲れてもいないのに時々木の根元に座り込んで話しをしたり、デーツのドライフルーツとナッツを食べたり、魔法瓶に入れた温かいほうじ茶を飲んだ。そんな風に急がずゆっくりゆっくり歩いても午後には目的地に着き、さっそくテントを張ってゴロンと横になり昼寝をぐーぐーした。11月ともなれば日が暮れるのも気温が落ちてゆくのも早く、あたりが暗くなった頃に もそもそと寝袋から顔を出して炭を熾し網の上で厚揚げやしし唐やシイタケやカボチャを炙り、塩むすびで鮭茶漬けを作って夕食にした。就寝前に熱々の生姜葛湯をふーふー吹いて飲み、体を内側からしっかり温めてから寝袋にミノムシのようにもぐり込んで氷点下の夜を明かした。夜にどんなに風が悪さをして強くテントを揺らしてもミノムシの寝息に耳を澄ませば不安にならない。翌朝、周囲がピークを目指して跡形なく消え去ったあとにミノムシたちはようやくバーナーで湯を沸かし、まずはモーニングコーヒー。そして次にシナモンとジンジャーの香り高く、粒の大きなカンボジアの茶色いパームシュガーをたくさん入れたオートミールをコッフェルでぐつぐつと煮て最後にナッツとハチミツピーナッツバターを落とした朝ごはんを食べた。

PB200028

PB200030

PB210038

PB210044

黒百合ヒュッテ


コメントを残す