葉わさびの粕漬け

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そろそろ雨の季節がやってくる。せまりつつある季節から逃れられるものなら逃れたいと5月の新緑眩しい山へ向かう。毎週末くらいに。以前は1人でも週末朝早く起きてバックパックに水や行動食やカメラを入れて山を歩いた。そんな私が最近 山仲間に恵まれた。いや、山友達はいるけれど、彼女は2ヶ月後には私のテントバディにもなってくれる極上の山仲間。基本的に私はソロ活動を好む。私は1人だったらどこへでも行けると思っちゃうし、1人だったら気が変わっても予定を変更しても自由に気兼ねなく過ごすことができるからラクだと思っている。基本的に。でも彼女と山に行くことでデュオもいいものだと改めて思った。
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先日は神秘的な奥多摩湖を見おろす倉戸山を歩いた。素晴らしい山道だった。地面は落ちた葉っぱで覆われ柔らかいクッションとなって膝の負担を和らげてくれた。急傾斜が続き、しっかり山登りをしてる気分になった。傾斜が急な登りの山道ではアキレス腱が切れそうなくらい伸びた。そよそよと風が吹き体温の上昇を中和してくれるからずっと気持ち良く歩き続けた。山は静かに歩きたい。前後に人がたくさんいると少しがっかりしてしまうけど、私が参考にしている山の本の著者は私と同じように静かな山歩きを好むのか、たとえ人気の山へ行ってもメインルートを外れることが多く、それほど多くの人間に遭遇しない。ただ、私はその日、人間でこそなかったけれど、遭遇してしまったのだ。
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ヘビに。
私はよくヘビに遭遇する。小さな頃から。それも1人の時に遭遇することが多い。子どもの頃、自転車に乗っていてヘビが現れたときはブレーキをかけて目の前で止まるのが怖くてそのまま猛スピードで自転車を漕ぎ、目をつぶって叫び声をあげながらヘビを踏んで走り去ったこともある。ごめんなさい!大人になってもちょくちょくヘビに会った。皮肉なのはヘビは私がこの世で一番苦手な生き物だということ。怖くてたまらない。でもヘビは縁起がいいという。ネイティブアメリカンも他の国でも昔からヘビに関して何かしら言い伝えや信仰がある。脱皮をすることからよくtransformationと関連づけられる。それから、人間の基底にとぐろを巻いて眠っている根源的生命エネルギー(=クンダリーニ)について言及しているのだろうか?生命力を示唆するとも言われているし、再生・誕生・死などとも結びつけられる。
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一番顕著だったのは私がバリのウブドで1ヶ月間、ヨガのティーチャートレーニングを受けていたときのことだ。私は、寝て、起きて、瞑想、ヨガ、食べて、学んで、また寝るという、余分なものを削ぎ落した極めてシンプルな生活(その分ヨガにどっぷり集中できた)を日々送っていた。セッションは早朝6時に瞑想から始まる。1時間の瞑想のあと、ヨガのアーサナのプラクティスがあって、ブランチになる。ブランチまではサイレントプラクティスといって内観するため静けさを保つ。朝、ヨガのプラットフォームで会う先生や生徒同士、声を出さず静かに微笑んで「おはよう」を伝え合う。私はこのサイレントプラクティスが好きだった。言葉なんてなくても目やその人が放つ空気で語られることの多さ。そして言葉がない分、私たちの注意はきちんとその人に100%向けられ100%受けとめ合う。宿舎からヨガのプラットフォームまでの短い道のりにはトロピカル植物が鬱蒼と生い茂り、そこで毎朝必ずガネーシャに捧げる花を摘んでくるというのもルールの一つだった。私はなるべく道に落ちたばかりのまだ鮮やかな花を探して茂みを歩いた。そして、そんな植物たちの呼吸の音が感じられるほど澄んだ静けさと、まだひんやり涼しい空気と神聖さが広がる朝に私はよくヘビを見た。
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私だけだった。 道すがらいつもヘビに遭遇していたのは。そんなのフェアじゃない!と思っていた。ヘビを見た途端、鼓動が早くなり手にじんわり汗をかき、どうやって道を横 切ろうか、横切れるのだろうかと、じりじりと後ろへ下がりしばらくその場に立ち尽くす。そして意を決して全速力で走った。ビーサンをつっかけた素足を心配 しながら。私の形相を見てサイレントプラクティスが解けたあと、先生が一体どうしたのとある日聞きにきたことがあった。訳を話すと、スイス人で昔は確実に当時のヒッピーだったのだろう、そして今その存在そのものに人生の年輪と大きな愛を感じる先生は「君に今、transformationが起こっているということだ。怖くなんてない。その緑のヘビには毒だってないのだから。」と言った。あのときは、transformationなんて起こっているのかどうか分からなかったし、そんなことよりも今日もヘビはいるのだろうか、毎朝はただそれだけで埋め尽くされていた。でも数年後、あの時期の自分をもっと大きな絵で捉えると紛れもなく人生最大のtransformationを遂げていたと思う。ヘビはそんな時期に差し掛かるといつも何度も私の前に現れる、夢にも姿を見せる。
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そして今またヘビが現れる。今年は3ヶ月前にコスタリカで遭遇し、そして先日、森から人間界へ舞い戻るほんの数歩手前でも。もしまた変化の機会が訪れているなら、私はしっかりしようと思った。自分がどうなりたいのか、きちんと意識していようと思った。意識は少しずつ集まって粒子となり分子となり形づくられてゆく。私が日々思うこと、行っていること、それら一つ一つが未来を形づくってゆく。それは料理と一緒だ。結局食材は形を変えながら他の材料とあわさって別のものへと変化し、そして最後に食事となるのだ。最初と最後で手元にあるものは変わらない。ただ行程があり道のりがあり形が変化するだけだ。何を食べたいのかで材料は変わる。そしてその時その時で、食べたいものも変わる。無限のチョイスと可能性があると思えば料理も人生もおもしろい。料理人次第でどれだけにでも美味しくなる。

奥多摩は水がきれいでわさびがよく採れる。奥多摩駅では農家の方が新鮮で青々としたわさび菜を売っていて、私たちは買わずにはいられなかった。ちょうど酒粕が冷蔵庫に眠っていたので、粕漬けに。ピリっと辛いこの粕漬けを食べるたびにヘビを想う。

葉わさびの粕漬け

参照レシピはこちら

材料

  • 葉わさび
  • 塩 小さじ1/2
  • 酒粕 40g
  • 酒 大さじ1
  • みりん 大さじ1
  • 砂糖 小さじ1/2

作り方

  1. 葉わさびを15cmほどに切り、塩揉みして翌日さっと熱湯にくぐらせて冷水にとる(辛味と歯ごたえを残すため密封容器に入れて1日常温でおく)
  2. 酒粕をレンジで人肌に温め、みりんと砂糖を入れてすり鉢で粗めにすり、粕床をつくる
  3. 辛味の出た葉わさびを粗みじんに刻み、水気を切り、粕と混ぜ合わせる
  4. 密閉容器に入れて冷蔵庫へ(美味しくなるのは3日以降)

Notes

小松菜などにも応用可。

http://i-eat.carrots.jp/wasabi/


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